おかき

ふと気になったので調べて記事にしてみました。

初めに

転職した薬剤師の方が年収は高いのか?厚生労働省の公的データをもとに、薬剤師の平均年収・年齢別傾向・勤務先別の差を整理。転職すべきか残るべきか判断する際の参考にしてください。


「今の職場に残り続けるべきか、それとも転職して年収を上げるべきか」——そう悩んでいる薬剤師は少なくないと思います。

調剤薬局、病院、ドラッグストア、どこに勤めていても「同期はもっと稼いでいるんじゃないか」「転職した人の方が年収が高いんじゃないか」と気になる瞬間はあるはずです。

ただ、インターネットで調べると「転職すれば年収アップ」という方向に誘導されているような記事が多く、実際のところが見えにくい状況もあります。

この記事では、厚生労働省の公的統計をベースに、薬剤師の年収の実態と、転職経験の有無によって年収にどのような差が生じやすいかを、できるだけ現実的に整理していきます。


薬剤師の平均年収はいくらか

まず基準となる数字を確認します。

厚生労働省が実施した「令和6年賃金構造基本統計調査」(2024年調査・2025年公開)によると、薬剤師全体の平均年収は約599万円(599万3,200円)です。

前年(令和5年調査)と比べると約21万円増加しており、賃上げの影響も出始めていることがわかります。

男女別に見ると、男性薬剤師の平均年収は約651万円、女性薬剤師は約556万円です。育児・産休などによる勤務形態の変化が、女性の平均年収を押し下げる一因とされています。

出典:政府統計の総合窓口 e-Stat「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種(特掲)、性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(2025年公開)

年齢別の平均年収の目安(令和6年賃金構造基本統計調査)

年齢層平均年収の目安(全体)
20代前半300万円台後半
20代後半500万円台
30代前半550万円台
30代後半600万円台
40代600万円台
50代前半ピーク(700万円台に達するケースも)
60代以降定年・勤務形態変化により低下傾向

出典:政府統計の総合窓口 e-Stat「令和6年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、年齢階級別」(2025年公開)

20代後半から30代前半にかけて年収が大きく上がるのは、就職後数年で現場に慣れ、管理薬剤師など役職に近づくタイミングと重なるためと考えられます。


転職した薬剤師の方が年収は上がりやすいのか

転職経験の有無だけで薬剤師の年収差を直接比較した公的統計は確認できません。 そのため本記事では、薬剤師全体の平均年収・年齢別・経験年数別の賃金・求人賃金・勤務先ごとの年収傾向をもとに、どのようなケースで年収差が出やすいかを整理します。

転職で年収が上がりやすいケース

① 病院薬剤師から調剤薬局・ドラッグストアへ転職する場合

病院薬剤師は経験が積める反面、若手のうちは年収が低めになりやすい傾向があります。厚生労働省「薬剤師の偏在への対応策」によると、常勤薬局薬剤師の中央値(20代:約430万円、30代:約530万円)は、常勤病院薬剤師の中央値(20代:約380万円、30代:約500万円)をやや上回っています。このため、病院から薬局・ドラッグストアへの転職は年収アップにつながりやすい傾向があります。

② 管理薬剤師のポジションを得て転職する場合

後述しますが、管理薬剤師になるかどうかが年収に大きく影響します。一般薬剤師として横移動するより、管理薬剤師として採用される転職の方が、年収変化が大きくなるケースがあります。

③ 都市部から地方・郊外の人手不足エリアへ転職する場合

薬剤師不足が深刻な地域では、求人賃金が高く設定されることがあります。都市部から地方へ転職した場合、手当や賃金の高さが年収増につながる可能性があります。

④ 転職時に年収交渉をした場合

転職は年収の「リセット交渉」ができる数少ない機会です。現職での小幅な昇給を待つより、転職時の交渉次第で一気に条件が変わることがあります。

⑤ 責任範囲が広がる職場に移った場合

夜間・土日対応、在宅医療対応、管理業務など、責任が増える職場では給与条件が高くなりやすいです。

転職しても年収が上がりにくいケース

① 同じエリア・同じ業態で横移動しただけの場合

同地域内で調剤薬局から調剤薬局へ転職した場合、条件が大きく変わらないことがあります。

② 未経験分野へ転職した場合

経験のない業態・業務に転職すると、スキルを一から習得する扱いになり、年収が下がるリスクがあります。

③ 時短・残業なし・福利厚生を優先した場合

働き方を改善するための転職では、年収は下がることが多いです。これは正しい選択肢であることも多いですが、「年収アップ」との両立が難しいケースもあります。

④ 転職時に年収交渉をしなかった場合

条件交渉をしなければ、現職と変わらない水準で採用されることもあります。


一度も転職していない薬剤師の年収はどうなるか

同じ職場で長く働き続けた場合、年収はどうなるのでしょうか。

一社に残り続けるメリット

  • 業務や人間関係に慣れているため、生産性が高く評価されやすい
  • 管理薬剤師・薬局長など社内の昇進ルートに乗る可能性がある
  • 退職金制度や福利厚生で有利な場合がある(特に大手チェーン・病院)
  • 社内の信頼が積み上がり、特定の業務を任されやすくなる

一社に残り続けるデメリット

  • 昇給テーブルが固定されている職場では、年収の伸びが緩やかになりやすい
  • 市場の相場を把握しにくく、自分の年収が低いかどうかに気づきにくい
  • 昇給・役職の機会は会社側の都合に左右されるため、コントロールしにくい
  • 外部評価(市場価値)をもとに年収交渉する機会が得られにくい

一つの会社に長く勤めること自体は決してマイナスではありません。ただ、薬剤師の年収が「勤続年数」よりも「役職・勤務先・地域」によって大きく左右される職種であることは意識しておく必要があります。


年収差はどれくらい出る可能性があるか

転職経験の有無そのものより、「何をきっかけに、どのような条件変化があったか」が年収差を生む本質です。ここではケース別に整理します。

ケース別の年収への影響

パターン年収が上がる可能性年収差の目安注意点
同じ調剤薬局で長期勤続緩やかな上昇確認できる統計なし(昇給幅は職場による)昇給テーブルが小さい職場では伸びにくい
調剤薬局→別の調剤薬局(同業態横移動)条件による求人条件により変動管理薬剤師ポジションの有無で大きく変わる
病院薬剤師→調剤薬局・ドラッグストアやや高め20〜30代のうちは薬局薬剤師が病院薬剤師を中央値で数十万円上回るデータあり(※1)生涯年収では大差ない(※1)。勤務環境の変化も伴う
都市部→地方・郊外(人手不足エリア)求人条件によっては高い求人条件により変動。地域間では年収差が生じるデータあり(※2)生活環境・通勤の変化も考慮が必要
一般薬剤師→管理薬剤師(転職の有無を問わず)高い調剤薬局の場合、管理薬剤師と一般薬剤師の平均年収差は約250万円(※3)転職の有無より役職の影響が大きい

※1:厚生労働省「薬剤師の偏在への対応策」より。65歳まで常勤で働いた場合の生涯年収の中央値は病院薬剤師が約2億3,280万円、薬局薬剤師が約2億2,768万円で差は約512万円。
※2:政府統計 e-Stat「令和5年賃金構造基本統計調査」より。都道府県別の年収差が存在することは確認できるが、転職前後の直接比較データではない。
※3:厚生労働省「第24回医療経済実態調査の報告(令和5年実施)」(2023年11月公開)。調剤薬局の常勤職員のうち、一般薬剤師の平均年収486万4,287円、管理薬剤師の平均年収734万8,725円。

ここで特に注目したいのが「管理薬剤師」の存在です。転職したかどうかよりも、管理薬剤師になるかどうかの方が年収に与える影響は大きいデータになっています。管理薬剤師として転職する、あるいは現職で管理薬剤師に昇進する——どちらのルートであっても、役職の変化が年収差を生むという事実は同じです。


転職しない薬剤師が年収を上げる方法

転職しなくても、年収を上げる手段はあります。

社内でのアプローチ

管理薬剤師・薬局長を目指す 先ほどのデータにある通り、管理薬剤師になるかどうかは年収に大きく影響します。転職しなくても、現職での昇進によって同等の年収アップが実現できる可能性があります。

在宅医療・認定薬剤師など専門性を高める 在宅業務の経験や認定薬剤師の取得は、職場内での評価に直結することがあります。また、在宅対応ができる薬剤師は需要が高く、将来的な転職交渉でも有利に働きます。

かかりつけ薬剤師の実績を積む かかりつけ薬剤師として加算を取れるようになれば、職場に対する貢献度を数字で示しやすくなります。交渉の材料にもなります。

社内で異動・担当変更を希望する 在宅や管理業務に関わることで、収入条件が変わるケースもあります。

本業以外のアプローチ

転職活動だけしてみる(転職しなくてもいい) 実際に求人を確認したり、エージェントに登録して面接を受けたりするだけで、自分の市場価値が把握できます。「今の年収が相場より低い」とわかれば、現職での交渉材料になります。

副業・薬剤師資格を活かした収入源を作る ブログ・SNS・noteなど、薬剤師の専門知識を発信するコンテンツビジネスは、資格の活用という観点からも親和性があります。薬機法との関係には注意が必要ですが、本業に支障のない範囲で収入を補う方法として検討する価値があります。


転職した方がいい薬剤師、残った方がいい薬剤師

最後に、どちらの選択が合っているかを整理します。

転職を検討してもいい状況

  • 3年以上同じ職場にいるが、昇給がほとんどない
  • 管理薬剤師になっても年収がほとんど変わらなかった
  • 求人サイトで同条件の求人を見たら、明らかに自分の年収の方が低い
  • 職場の人手不足が深刻なのに給与改善の気配がない
  • 昇進・成長の見込みが見えない

現職にとどまってもいい状況

  • 昇進ルートが見えており、3〜5年内に管理薬剤師・薬局長の機会がある
  • 退職金・企業年金など長期の福利厚生が充実している
  • 残業が少なく、子育てや生活との相性がいい
  • 人間関係が良く、職場環境に満足している
  • 在宅医療や専門認定など、現職でしか積めないキャリアがある

どちらが正しいというわけではなく、「今の年収が市場から見てどのくらいの水準にあるか」を把握した上で判断するのが現実的です。


まとめ

この記事の内容を整理します。

  • 転職経験の有無そのものが、薬剤師の年収差を決定づける要因ではありません。
  • 年収差を生む主な要因は、勤務先(病院・薬局・ドラッグストア・企業)役職(管理薬剤師かどうか)地域(人手不足エリアかどうか)年収交渉をしたかどうかです。
  • 厚生労働省「第24回医療経済実態調査」によると、調剤薬局での管理薬剤師と一般薬剤師の年収差は約250万円。転職の有無より、役職変化の影響が大きいデータになっています。
  • 病院薬剤師と薬局薬剤師の生涯年収の差は、同省データで約512万円にとどまります。年代ごとの差はあるものの、長期的には大きな開きにはなりにくいとされています。
  • 年収だけでなく、勤務時間・休日・責任・通勤・退職金・福利厚生を含めたトータルで比較することが重要です。
  • 薬剤師は資格職のため、転職しなくても「転職活動だけしてみる」ことで市場価値を確認でき、現職での交渉材料にもなります。

「今の職場に残った5年後の年収」と「転職した場合に提示されそうな年収」を一度比べてみることで、自分の市場価値が見えやすくなります。 まずは求人情報を眺めてみるだけでも、判断の精度はかなり上がります。転職するかどうかは、その後で決めても遅くありません。


出典一覧

  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(2024年調査・2025年公開) 政府統計の総合窓口 e-Stat
  • 厚生労働省「第24回医療経済実態調査の報告(令和5年実施)」(2023年11月公開)
  • 厚生労働省「薬剤師の偏在への対応策」
  • 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「薬剤師」「医薬情報担当者(MR)」
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都内の中小薬局で働いてる薬剤師。106回薬剤師国家試験に合格。奨学金700万の返済のために『薬剤師として稼いでいく』ブログを開設。ドラックストアでアルバイト経験から中小薬局に就職し、薬剤師×投資家としてFIREを目指してます。