薬局の休憩時間は何をする?医学的根拠から考えるおすすめの過ごし方

薬局で働いていると、昼休みの過ごし方に迷うことはありませんか?
はじめに
昼食を食べて、同僚とおしゃべりをして、スマートフォンを見ていたら休憩時間が終わってしまう。
「もっと有意義な時間の使い方があるのでは?」と感じる人もいるでしょう。
しかし、休憩時間は必ずしも勉強や自己投資に使う必要はありません。
大切なのは、午後の仕事に向けて心身を回復させながら、仕事以外の自分の時間も楽しむことです。
この記事では、厚生労働省のガイドラインや、仮眠・運動・職場の休憩に関する研究をもとに、薬局の休憩時間の過ごし方を解説します。
60分・90分の休憩時間を想定した具体的なモデルプランも紹介します。
結論:休憩時間は「休む・動く・楽しむ」を組み合わせる
薬局の休憩時間を有効に活用するなら、次の4つを検討してみましょう。
- 短い仮眠を取る
- 食後に軽く散歩する
- 同僚との楽しい会話を楽しむ
- 仕事から離れ、好きなことをする
いずれも、睡眠医学や運動科学、職場の心理的回復に関する研究から考えられる選択肢です。
ただし、すべてを毎日実践する必要はありません。
疲れている日はゆっくり休む。身体を動かしたい日は散歩する。誰かと話したい日は会話を楽しむ。
その日の体調や気分に合わせて選ぶことが大切です。
1.15〜20分程度の仮眠で眠気を軽減する
昼食後に眠気を感じる人は、短い仮眠を検討してみましょう。
米国疾病予防管理センター(CDC)の国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、日中に勤務する人の疲労対策として、20分未満の短い仮眠を紹介しています。
短時間の仮眠には覚醒度を改善する効果が期待されます。
一方、長時間眠った場合には、目覚めた直後にぼんやりした状態になることがあります。
これは「睡眠慣性」と呼ばれる現象です。
薬局の休憩中に仮眠を取るなら
- 15〜20分程度を目安にする
- アラームを設定する
- できるだけ静かな環境を選ぶ
- 目覚めた後に頭がはっきりするまで余裕を持つ
特に薬剤師は、調剤・監査など注意力を要する業務を担当します。
仮眠直後に眠気やぼんやり感が残っている場合は、そのまま重要な作業を始めないよう注意が必要です。
また、短い仮眠であっても、強い睡眠不足がある場合には睡眠慣性が生じることがあります。
仮眠は夜間の十分な睡眠に代わるものではありません。
参考資料
CDC/NIOSH「Nap Duration」(2020年3月31日最終レビュー)
2.食後の散歩は血糖コントロールに役立つ可能性がある
昼休みに取り入れやすい運動が、ウォーキングです。
2013年に医学誌『Diabetes Care』で発表された研究では、60歳以上で耐糖能異常のリスクがある10人を対象に、食後のウォーキングが血糖値に及ぼす影響を調べました。
この研究では、毎食後15分間のウォーキングが24時間の血糖管理を改善しました。
特に夕食後の血糖上昇については、朝や午後に45分間まとめて歩く場合よりも、食後に分けて歩く方法の方が優れた結果が得られました。
ただし、対象者は10人と少なく、60歳以上の耐糖能異常リスクがある人に限られています。
健康な成人や薬剤師全般に、同じ効果が得られると断定することはできません。
日本の身体活動ガイドラインでも推奨
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、座りっぱなしの時間を長くしすぎず、少しでも身体を動かすことを推奨しています。
薬局では立ち仕事が多い場合もありますが、仕事中の活動量や疲労の程度には個人差があります。
疲れている日に無理に歩く必要はありません。
散歩する余裕がある日は、昼休みに10〜15分程度、外を歩いてみるのもよいでしょう。
参考資料
DiPietro L, et al. Diabetes Care. 2013;36(10):3262-3268.
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2023年版、掲載ページ最終更新2024年2月22日)
3.昼休みの散歩は仕事のストレス対策にもなる?
散歩については、血糖値だけでなく心理的な回復に関する研究もあります。
2017年に『Journal of Environmental Psychology』で発表された研究では、フィンランドの知識労働者153人を対象として、昼休みの過ごし方を検討しました。
研究では、昼休みに15分間の公園散歩、またはリラクゼーションを実施しています。
その結果、こうした休憩活動によって緊張感が軽減することが報告されました。
ただし、疲労回復に対する効果には季節などによる違いもあり、必ずしも持続的な改善が認められたわけではありません。
この研究から、薬局で働く人にも同じ効果があると断定はできませんが、昼休みの散歩は気分転換の選択肢になりそうです。
参考資料
Effects of park walks and relaxation exercises during lunch breaks on recovery from job stress: Two randomized controlled trials.
Journal of Environmental Psychology. 2017;51:14-30.
https://doi.org/10.1016/j.jenvp.2017.03.006
4.同僚とのおしゃべりは無駄な時間ではない
「休憩時間を有意義に過ごしたい」と思うと、読書や勉強をした方がいいように感じるかもしれません。
しかし、職場での良好なコミュニケーションにも、心理的な回復との関連が報告されています。
2018年に『Journal of Occupational and Organizational Psychology』に掲載された研究では、109人の労働者を対象に、昼休みの体験と午後の状態との関連を調べました。
その結果、休憩中にリラックスできること、自分で過ごし方を選べること、人とのつながりを感じられることは、休憩後の回復感を介して、午後の疲労感の少なさや仕事への積極性と間接的に関連していました。
さらに2024年には、英国の一般診療医58人を対象とした研究で、休憩中の良好な交流が、その日の燃え尽き感や疲労感の少なさなどと関連していることが報告されています。
ただし、どちらも主に観察的な研究です。
「同僚と会話すれば疲労が必ず減る」という因果関係が証明されたわけではありません。
また、会話の内容や人間関係によっては、かえって疲れることもあるでしょう。
重要なのは、自分が心地よく過ごせているかどうかです。
楽しい会話なら大切にする。一人で過ごしたい日は無理に会話へ参加しない。
そんな柔軟な休憩の取り方でも問題ありません。
参考資料
Bosch C, et al. Journal of Occupational and Organizational Psychology. 2018;91(1):134-157.
https://doi.org/10.1111/joop.12195
Hall LH, et al. PLOS ONE. 2024;19(8):e0307513.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0307513
5.短い休憩そのものにも回復効果はある?
2022年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、10分以内の短い休憩(マイクロブレイク)の効果が検討されました。
この研究では、22の独立した研究サンプル、合計2,335人のデータが分析されています。
その結果、短い休憩によって活力が増し、疲労感が軽減する小さな効果が認められました。
一方、仕事全体のパフォーマンスについては、統計学的に有意な改善が認められませんでした。
また、この研究は主に作業の合間の短い休憩を調べたもので、60分・90分の昼休みを直接検証したものではありません。
そのため、長い昼休みの最適な配分を決める根拠にはなりませんが、仕事から離れて休むことの重要性を考えるうえで参考になります。
参考資料
Albulescu P, et al. PLOS ONE. 2022;17(8):e0272460.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0272460
6.薬局の休憩時間60分・90分のおすすめプラン
ここまでの研究を踏まえて、具体的な過ごし方を考えてみます。
以下は医学的に最適と証明された時間配分ではなく、研究結果を日常生活に取り入れるための一例です。
90分休憩のモデルプラン
- 0〜25分:昼食と同僚との会話
- 25〜40分:屋外を散歩
- 40〜60分:短い仮眠
- 60〜80分:読書・趣味・自由時間
- 80〜90分:水分補給・仕事再開の準備
休憩が長めに取れる日は、食事・運動・休息・趣味を組み合わせられます。
仮眠を取らずに、趣味やリラックスの時間を長くしてもよいでしょう。
60分休憩のモデルプラン
- 0〜20分:昼食と同僚との会話
- 20〜30分:散歩
- 30〜45分:短い仮眠
- 45〜55分:好きなことをする
- 55〜60分:仕事再開の準備
60分休憩の場合は、すべてを詰め込む必要はありません。
疲労が強い日は散歩を省略し、休息を優先する方法も考えられます。
なお、仮眠から目覚めた後に眠気が残る場合は、仕事再開までの余裕をさらに確保する必要があります。
7.休憩時間は自己投資に使うべき?
読書、資格の勉強、副業、将来に向けた学習。
こうした活動は確かに有意義ですが、休憩時間のすべてを自己投資に使う必要はありません。
休憩に関する研究では、過ごし方を自分で選べることも重要な要素として報告されています。
大切なのは「生産的に過ごせたか」だけではなく、「自分が望んだ時間を過ごせたか」という視点です。
例えば、次のような使い方も考えられます。
- 好きな本や漫画を読む
- 気になっている旅行先を調べる
- 音楽を聴く
- 家族や友人と連絡を取る
- 何もせず静かに過ごす
必ずしも成果を出すことを目標にしなくてもよいでしょう。
休憩は自分自身の生活を楽しむための時間でもあります。
8.そもそも薬局の休憩中に仕事をする必要はある?
休憩時間の過ごし方を考えるうえで、労働基準法も確認しておきましょう。
労働基準法第34条では、次の休憩時間が定められています。
- 労働時間が6時間を超え、8時間以下:少なくとも45分
- 労働時間が8時間を超える:少なくとも60分
また、休憩時間は労働者が自由に利用できなければなりません。
厚生労働省は、休憩中に電話や来客への対応を指示されている場合、その時間は休憩ではなく労働時間に該当すると説明しています。
つまり、休憩時間を業務に充てることが当然というわけではありません。
仕事から離れて休む時間を確保することも大切です。
参考資料
厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」
9.薬局の休憩時間に関するよくある質問
Q.休憩中は寝た方がいいですか?
午後に眠気が強い人にとって、短い仮眠は有力な選択肢です。
ただし、全員が毎日寝る必要はありません。眠気がない場合は、散歩や読書などを選んでもよいでしょう。
Q.昼休みの散歩は何分が理想ですか?
今回確認した研究だけでは、すべての人に共通する理想的な時間は決められません。
10〜15分程度を一つの目安として、体調や仕事中の活動量に合わせて調整してみましょう。
Q.休憩中にスマートフォンを見るのは悪いことですか?
スマートフォンを使うこと自体が、必ずしも悪いわけではありません。
好きな動画や音楽を楽しむ時間として役立つ場合もあります。
一方、情報を見続けることで疲れを感じるのであれば、画面から離れる時間を作るのも一つの方法です。
Q.休憩時間を勉強に使わないと損ですか?
そんなことはありません。
仕事以外の知識を身につけることにも価値がありますが、休憩は本来、仕事から離れて過ごせる時間です。
疲れている日に無理をして勉強する必要はありません。
まとめ:薬局の休憩時間は「回復」と「楽しさ」を大切に
薬局の休憩時間を有意義に過ごすためには、必ずしも特別なことをする必要はありません。
研究からは、短い仮眠による覚醒度の改善、食後のウォーキングによる血糖管理への効果、良好な人間関係と心理的な回復との関連などが報告されています。
ただし、各研究の対象者や条件は異なり、薬剤師の昼休みについて唯一の正解が示されたわけではありません。
大切なのは、体調や気分、職場の環境に合わせて、自分にとって心地よい休憩方法を選ぶことです。
まずは普段の休憩に、10〜15分の散歩や短い仮眠などを一つだけ取り入れてみてはいかがでしょうか。
休憩時間を、単なる仕事の合間ではなく、自分自身の健康と人生を大切にする時間にしていきましょう。
参考資料・出典
以下の資料を2026年10月23日に確認しました。
- CDC/NIOSH(2020年3月31日最終レビュー)「Nap Duration」
https://www.cdc.gov/niosh/work-hour-training-for-nurses/longhours/mod7/05.html - 厚生労働省(2023年版、2024年2月22日更新)「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-002.html - DiPietro L, et al.(2013年)Diabetes Care.
https://doi.org/10.2337/dc13-0084 - Effects of park walks and relaxation exercises during lunch breaks on recovery from job stress(2017年)Journal of Environmental Psychology.
https://doi.org/10.1016/j.jenvp.2017.03.006 - Bosch C, et al.(2018年)Journal of Occupational and Organizational Psychology.
https://doi.org/10.1111/joop.12195 - Hall LH, et al.(2024年)PLOS ONE.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0307513 - Albulescu P, et al.(2022年)PLOS ONE.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0272460 - 厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/joken_kankyou_rule.html
※本記事は一般的な健康情報を提供するもので、個別の診断・治療を目的としたものではありません。