はじめに

「仕事はできる方だと思う。でも、給料がなかなか上がらない」

「店舗を円滑に回すために頑張っているのに、給与に反映されない」

そんな疑問を持ったことはありませんか?

薬剤師の仕事は、調剤や服薬指導だけではありません。

スタッフの業務分担、後輩の教育、トラブル対応、在宅業務の準備など、店舗全体を円滑に運営するための仕事もあります。

私は管理薬剤師として働く中で、「仕事ができる薬剤師とは、どんな薬剤師なのか?」を考えるようになりました。

この記事では、私自身の店舗運営や後輩指導の経験と、厚生労働省などの公的資料をもとに、仕事ができる薬剤師の能力が給与に結びつかない理由と、評価を受けるために考えたいことを整理します。

結論:仕事ができることと、給料が上がることは別

私が考える結論は、次のとおりです。

薬剤師として優秀であっても、その能力を会社が給与として評価する仕組みがなければ、昇給につながるとは限りません。

例えば、店舗の問題を解決できる薬剤師がいたとします。

スタッフが困っていれば助け、仕事が滞っていれば優先順位を判断し、店舗が問題なく回るように対応する。

こうした能力は、店舗運営において重要です。

しかし、会社の給与制度が勤続年数や役職などを中心に設計され、業務改善や人材育成の成果が十分に評価されない場合、能力と給与の間に差が生まれる可能性があります。

だからこそ、仕事を頑張るだけではなく、自分のどんな能力が会社から評価されているのかを知る必要があると思います。

1.「仕事ができる薬剤師」とはどんな人なのか?

薬剤師として仕事ができる人と聞くと、次のような人を思い浮かべるかもしれません。

  • 調剤や監査が正確で速い
  • 薬学的知識が豊富
  • 疑義照会や処方提案が適切にできる
  • 患者や医療関係者と円滑にコミュニケーションできる

もちろん、どれも重要な能力です。

しかし、管理薬剤師の立場で考えると、もう一つ大切な能力があります。

それは、店舗全体を円滑に回す能力です。

忙しい時間帯に何を優先するべきか。

誰にどの仕事を任せるのが適切か。

スタッフが抱えている問題をどう解決するか。

こうした判断ができる薬剤師は、単に自分の仕事ができるだけでなく、チーム全体の仕事を支える存在です。

ただし、私はここで一つの違いに気づきました。

A:自分が中心となって店舗を回す薬剤師

自分の業務処理能力が高く、問題が起きても自ら対応できるタイプです。

周囲のスタッフが十分に対応できないときは、自分が判断して仕事を進めます。

その一方で、その人がいないと業務が滞るような状態になれば、店舗運営が特定の人に依存してしまいます。

B:自分がいなくても店舗が回る仕組みを作る薬剤師

スタッフの役割を明確にし、業務を分担し、後輩が自分で判断できるよう育成するタイプです。

管理薬剤師がすべての仕事を抱えるのではなく、各スタッフが責任を持って働ける環境を整えます。

私が目指したいのは、Bの薬剤師です。

しかし、自分自身を振り返ると、Aの働き方になっている部分がありました。

2.私がAの管理薬剤師になっていた理由

私が管理薬剤師として難しさを感じているのが、後輩への仕事の任せ方です。

後輩には仕事を任せていますし、任せた仕事は本人に最後までやってもらっています。

しかし、仕事をお願いして了承を得ても、予定どおりに進んでいないことがあります。

そのため、途中で進捗を確認する必要があります。

確認すると仕事が進むこともありますが、毎回そうなるわけではありません。

また、私から見ると、後輩が自分の好きな業務を優先し、店舗全体の優先順位を十分に考えて動けていないと感じる場面もあります。

ただし、これは私から見た状況です。後輩本人がどのように優先順位を判断しているのか、仕事が進まない原因が何なのかは、別に確認する必要があります。

ここで考えさせられたのは、仕事を任せることと、仕事を管理することは違うという点です。

仕事は任せても、管理する負担は残っている

例えば、後輩に翌日の準備を任せたとします。

仕事自体は後輩が担当しています。

しかし、管理薬剤師である私が進捗を確認し、仕事の優先順位を伝え、期限までに終わるかを把握しなければならない。

この場合、仕事を任せていても、進捗管理の負担は私に残っています。

私は、ここを変えていきたいと思っています。

仕事を本人に終わらせてもらうだけではなく、自分で進捗や優先順位を管理できる状態を作りたいのです。

3.後輩に「気を利かせて働いてほしい」だけでは変わらない

後輩に対して、もっと周囲を見て働いてほしいと思うことがあります。

しかし、「気を利かせる」という言葉は抽象的です。

何をすればよいのか、どこまで対応するのかが曖昧なままでは、管理者と後輩で認識が違う可能性があります。

そこで私が取り入れたいと考えているのは、次の3つです。

① 担当業務と完成基準を明確にする

「明日の準備をお願い」ではなく、

「明日の準備を16時までにここまで終わらせてほしい」

というように、仕事の完成状態と期限を共有します。

② 進捗報告を本人の仕事にする

管理薬剤師が何度も確認するのではなく、後輩から進捗を報告してもらうルールを作ります。

例えば、

「15時に進捗を教えてほしい。間に合わなそうなら、それより前に相談してね」

という伝え方です。

もちろん、これは私が考えている改善案であり、すでに成果が出た方法というわけではありません。

③ 終わらなかった理由を一緒に確認する

仕事が遅れたとき、すぐに本人のやる気や能力の問題だと判断しないことも重要です。

業務量が多かったのか、優先順位が分からなかったのか、指示の内容が曖昧だったのか。

まずは原因を確認し、次の仕事につなげる必要があります。

厚生労働省が2022年6月29日に策定した「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」でも、役割や必要な能力・スキルを明確にし、適切に評価することが推奨されています。

出典:厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」

また、米国医療研究・品質庁(AHRQ)が2023年に公開したTeamSTEPPSでは、伝えた内容を相手が理解しているか確認する「クローズドループ・コミュニケーション」が紹介されています。

出典:AHRQ「Closed-Loop Communication」

これらは、具体的な業務分担や指示の方法を考えるうえで参考になります。

なお、患者の安全に関わる確認や、管理薬剤師として必要な監督まで省略するわけではありません。

4.それでも仕事ができる薬剤師の給料が上がらない3つの原因

ここで、最初の給与の問題に戻ります。

店舗を円滑に回せる能力があっても、なぜ給与が上がらないのでしょうか。

考えられる原因は3つあります。

原因① 店舗運営への貢献が評価されにくい

例えば、業務の優先順位を調整して残業を抑えたり、スタッフを教育して対応できる仕事を増やしたりすることは、店舗への貢献と考えられます。

しかし、こうした成果を記録していなければ、評価面談で具体的に説明しにくくなります。

「頑張りました」と伝えるだけでなく、どんな課題に対して、何を改善したのかを示す必要があると思います。

原因② 会社の評価制度と本人の能力が一致していない

厚生労働省は、仕事の内容や役割の重要さに基づいて給与を決める「職務給」という制度を紹介しています。

一方で、職務給の位置づけや形態は企業によって異なります。

出典:厚生労働省「職務給について」

つまり、店舗運営の能力が高い薬剤師でも、その能力を評価する仕組みが勤務先に整っていなければ、給与に反映されない可能性があります。

重要なのは、自分が何を頑張るかだけでなく、会社が何を評価するかということです。

原因③ 給与を上げるための選択肢を持っていない

どれだけ仕事ができても、現在の職場で昇給できる余地が小さければ、大幅な給与改善は難しいかもしれません。

だからこそ、給与の評価基準を確認したり、他の職場の求人条件を比較したりすることにも意味があります。

ただし、転職すれば必ず給与が上がるというわけではありません。

年収だけでなく、担当業務、役職、残業時間、休日なども含めて判断する必要があります。

5.管理薬剤師が給与を上げるために考えたいこと

私は、管理薬剤師としての能力を高めることと、その能力に見合った給与を受け取ることは、分けて考える必要があると思っています。

まずは店舗改善の成果を見える化する

例えば、次のような項目です。

確認する項目記録する内容
業務分担各スタッフの担当業務が明確になったか
進捗管理管理者から確認する回数に変化があったか
人材育成後輩が自分で対応できる業務が増えたか
業務効率残業時間や業務の滞留に変化があったか
安全性必要な確認や患者安全が維持されているか

こうした項目を記録することで、自分がどのように店舗運営へ貢献したのかを説明しやすくなります。

ただし、業務量や人員配置などによって結果は変わるため、数字の変化をすべて管理者個人の成果と考えることはできません。

次に、会社の給与評価を確認する

給与面談では、次のようなことを確認したいと考えています。

  • 管理薬剤師の給与は、どのような基準で決まるのか
  • 店舗運営の改善や後輩育成は評価対象なのか
  • 昇給するには何を達成する必要があるのか
  • 現在の役職に給与の上限はあるのか

これらが分かれば、今の会社で給与を上げるために必要な行動を考えやすくなります。

それでも評価されないなら、転職も選択肢になる

今の会社で給与が上がる見込みが乏しいのであれば、別の職場の条件を比較してみるのも一つの方法です。

特に店舗管理や人材育成の経験がある薬剤師なら、応募先でどのような責任を担い、それに対してどんな待遇が提示されるのかを確認したいところです。

転職サイトを活用した条件比較については、こちらの記事でも整理しています。

薬剤師が年収を上げる転職サイトの使い方|現役薬剤師がFIRE目線で比較

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大切なのは、転職を急ぐことではなく、現在の職場と他の職場を比較できる判断材料を持つことだと思います。

6.管理薬剤師として目指したい姿

私は、後輩の仕事をすべて代わりにやっているわけではありません。

任せた仕事は本人に最後までやってもらっています。

しかし、その仕事がきちんと進んでいるのかを確認する負担は、まだ私に残っています。

だからこそ、これからは自分が頑張って店舗を回すだけでなく、スタッフが自分で考えて行動できる仕組みを作っていきたいと考えています。

目指すのは、自分一人に業務が集中する店舗ではありません。

スタッフそれぞれが役割を果たし、管理薬剤師が必要な判断や監督を行いながら、チーム全体で店舗を運営できる状態です。

もちろん、人材育成には時間がかかります。

また、人員不足や会社の方針など、管理薬剤師一人では解決できない問題もあります。

それでも、今の働き方を見直すことには意味があると思っています。

まとめ:仕事ができるだけでは、給料は上がらない

今回、管理薬剤師としての働き方を振り返り、改めて考えたことがあります。

それは、仕事ができる薬剤師と、その能力を給与として評価される薬剤師は、必ずしも同じではないということです。

店舗を円滑に回す能力は大切です。

しかし、自分だけが頑張り続ける状態では、負担が集中してしまうことがあります。

一方で、仕組みを作って店舗を改善できたとしても、会社がその成果を評価しなければ給与には結びつきません。

だからこそ、管理薬剤師として成長すると同時に、会社が自分の役割や成果をどのように評価するのかを知る必要があると思います。

まず私が取り組みたいのは、2週間、スタッフへの業務指示と進捗確認の状況を記録することです。

どこに管理の負担が集中しているのかを把握し、仕事の任せ方を改善する材料にしたいと考えています。

仕事を頑張ることは大切です。

しかし、その努力が持続できる働き方になっているか、能力に見合った待遇を受けているかも、同じくらい考える必要があるのではないでしょうか。


参考資料

※情報確認日:2026年10月27日

  1. 厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」
    策定:2022年6月29日
    https://manabi-naoshi.mhlw.go.jp/guideline/
  2. 厚生労働省「職務給について」
    ページの初回公開日:【確認できません】
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syokumukyu.html
  3. Agency for Healthcare Research and Quality「Tool: Closed-Loop Communication」
    公開・最終レビュー:2023年5月
    https://www.ahrq.gov/teamstepps-program/curriculum/communication/tools/loop.html
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おかき
都内の中小薬局で働いてる薬剤師。106回薬剤師国家試験に合格。奨学金700万の返済のために『薬剤師として稼いでいく』ブログを開設。ドラックストアでアルバイト経験から中小薬局に就職し、薬剤師×投資家としてFIREを目指してます。